河本家住宅古民家には驚きと癒しがある。まことに美しい民家である。門を入ると清楚な母屋が凛として建っている。左に小さいが「庭の七木」をあしらった庭、中に入ると「中庭」と呼ばれる土間がある、奥に炊事場(仕事場)左側に和室が連なっている。欄間のダイナミックさに感嘆する。
貞享5年(1688年)建築の民家。当初は落棟客間の変形6間取り、後に広間5間取りに復元した。防火のため、竈(かまど)の天井に泥を塗るなど、随所に「暮らしの知恵」が施されている。
光集落 今回の企画の本命、鏝絵の町にたどり着いた。
鳥取県東伯郡琴浦町(旧、東伯町と赤碕町が合併)大山山麓
に広がる農村地帯の一角に光集落がある。平凡な農村集落だが、家々に従えた土蔵のほとんど全てに様々な鏝絵が見られ、さながら村全体が左官博物館的な様相を呈している。
これらの鏝絵のほとんどは、この地に生れた左官職吉田貞一
(1985没)の作である。独学で鏝絵を学び、鶴や亀、巾着
などの下絵を何度も何度も練習したという。
また鏝絵のみならず鮮やかな海鼠壁も手掛け、独特の意匠が
この狭い集落で見られ、漆喰細工の博物館の感がある。
光(みつ)地区の鏝絵(こてえ)=左官職人が、コテを使っ
て漆喰の壁などに描いたレリーフ(浮き彫り)を鏝絵という
が、琴浦町光には戸数四十八戸の内、鏝絵のある蔵や母屋が
四十三棟も密集している。鏝絵が一所に集中しているのは全国的にも珍しく、近年注目されるようになった。これらは昭和30年代から描かれるようになり、吉田貞一(よしだていいち)が石州左官職人の生越故次郎(なまこしこじろう)から鏝絵技法を習得した処にあるようだ。
光から桐谷家に向かう途中に西日本最大といわれる墓地を
通る。まるでニューヨークのマンハッタンを空から観てい
る景観だ。墓石が摩天楼のようで都市の未来を暗示してい
るかのようである。相当の数の墓地だが海岸べりのお墓参
りは過酷な天候の時にはさぞ大変だろうと、いらぬ思いを
馳せる。話のネタには一見、おすすめである。花見潟墓地